こんにちは、美容精神科医の茂木千明です。 さて、今回は姿勢とメンタルの関連について触れたいと思います。 少しありふれた話じゃない? 聞いたことぐらいあるよ! と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。 姿勢に関する研究は非常に活発に行われており 姿勢を正すだけで
自信が湧いて逆境に強くなる
集中力も高まる
ポジティブな感情が湧いてくる
などなど
メンタル面でも非常に良い効果が得られます。
しかも四六時中ではなく、たった数分間姿勢を正すだけでも良い結果が得られるため、こんなにコストパフォーマンスが良いメンタルヘルス対策はないとも言えるでしょう。
しかし一方で・・・
この記事を読まれている方は、周囲にいらっしゃる人にちらっと目を向けていただくか、もしくは自分自身の姿勢を鏡やスマホのカメラ等で見返してみて下さい。
背筋を伸ばして姿勢が良い人は周囲にいますか? 自分自身の姿勢はどうですか?
・・・はい、ほとんどの方は猫背だったのではないでしょうか。
これは
純粋にその方が楽
姿勢の重要性を理解していない
自分の姿勢の悪さに気がついていない
などの理由もあるため、無理もないことなのかもしれません。
ただ、姿勢はメンタルをより良く保つためには重要な要因の一つでもあることには変わりません。
今回、姿勢を正すことの重要性や意識してもらいたい要点をご紹介することで、改めて姿勢に対する理解を深めていただくとともに、どんな時に姿勢を正せば良いのかを学んでいただきたいと思います!
姿勢が自分と周囲に与える影響力について
姿勢はただの身体の構え方(立ち方や動かし方の一つ)と捉える方が多いかもしれません。
しかし、社会学者に言わせると
姿勢 = 非言語行動であり一種のコミュニケーションである
とされています。
どういうことかイメージしやすいよう、ファッションに例えてみましょう。
例えば、ご自分がクリーニング後のシワのないスーツを着ていた場合、それを見た人には社会人として信頼に足る人とアピールができるかもしれません。 また、ハイブランドの服を着ているなら、ハイブランドが買えるだけの社会的ステータスがあると周囲に知らしめることもできるでしょう。
ご自身が望むか望まないかは別として
ファッション = 周囲に対して言葉を使わない(=非言語)アピール(≒コミュニケーション)
として効果があり、そのことを潜在的に意識しながら私たちは日々服装をチョイスしているわけです。
そして姿勢や振る舞いもファッションと同様と言えます。
姿勢を正して上半身をあまり動かさず腕を大きく振り、大股で歩いていた方を見るとどのように印象を持ちますか?
この人は自信家で優秀な人、あるいは人を導くのに値する人と捉えられるかもしれません。
では一方で、姿勢は正すが小股でやや内股で歩いていた場合はどうでしょう?
内なる自信はあれども、おしとやかで控えめといった印象を持つことでしょう。
なら、やや猫背で顎が出てガニ股で歩いていた場合は?
ちなみにこれは私の実話でもあるので一緒にご想像いただきたいのですが、先日銀座で拝見したとある女性のことです。
その方は全身一流ブランド品に身を包み、先ほどの姿勢で銀座の街中を歩いていました。どうも立ち姿や歩き姿が美しくなく、見栄えが良いだけに尚更それが目につく始末・・・
全身で数百万円の装飾品を身につけているにも関わらず、残念ながらネガティブな印象が残るものでした。
姿勢は数百万の宝石にも勝る
そう言っても過言ではないのかもしれません。
では、この姿勢や振る舞いはどの程度周囲に影響を与えるのでしょう?
面白い研究があるのでご紹介したいと思います。
その研究の概要は以下の通りです。
・医師が患者さんに対して診察を行なっている様子を動画に撮る
・医師は姿勢が良い場合と姿勢が悪い場合の2通りで診察を行う
・その動画を音声なしで被験者の方々に見せる
・どっちの医師が患者さんに訴訟されそうだと思うか被験者に尋ねる
というもの。
結果は、姿勢の悪い医師が圧勝というものです。
姿勢一つが他人に強く影響を与えることがおわかりいただけるのではないでしょうか。
医療従事者としては
何を語るか(=耳からの情報)よりもどう語るか(=見た目の情報)
の方が重要かもしれないというやや残念な結果と言えるかもしれません。
特に私のような精神科医にとっては・・・
ただこうした研究結果は、姿勢という見た目の情報の重要性や、人から見られていることへ意識を持つことを再認識するには、十分なものと言えます。
皆さんも日々あらゆるところで人から見られていますし、その分影響を与えているとも考えられます。 姿勢を「自分だけの事」で片づけないようにしたいものですね。
姿勢は自分自身に対するシグナル
今までは周囲への影響を見てきましたが、実は姿勢は自分自身へのメッセージでもあります。
姿勢を正して堂々と振る舞えば、ストレスは軽減し厳しい状況も乗り越えやすくなります。
逆に背中を丸めて弱々しく振る舞えば、ストレスが高まり些細な刺激にも過剰に反応するようになります。
なぜこれほどの変化が心身に現れるのでしょうか。
これは身体の中のホルモンで説明することが可能です。
姿勢を正して堂々と振る舞う場合にはストレスホルモンであるコルチゾールが減り、やる気ホルモンであるテストステロンが増えるからと考えられています。
姿勢がホルモンの分泌に影響するということですね。
ちなみに・・・更に大事なのはここからで
姿勢を正すのは、たった2分程度でも十分効果が期待できるというのです!
自分がパワフルだと感じるポーズ(背筋を伸ばす/胸を大きく開く/腰に手を当てる)を2分間別室で取っただけで、その後の就職面接での評価高まったという研究もあります。
逆に弱々しいポーズ(自身の首に触れる/前屈みになる/体を抱きしめるように腕を組む)などのポーズをとったグループの就職面接評価はボロボロでした。
姿勢を正すことは自分自身に意図的に影響を与え、コントロールする一つの方法でもあるとも言えるのでしょう。
やるなら今でしょ?
先の研究からも分かる通り、
何かストレスが降りかかりそうな時には
たった2分間
姿勢を正したり自分自身がパワフルに感じるようなポージングするだけで
今から戦闘態勢だ!
と自分にシグナルを出すことができるわけです。
流石に人前でできないかもしれませんが、トイレに逃げ込んで2分間ポージングしてみてはいかがでしょう。
就職面接以外でも、緊張する場面や不安を感じる場面に遭遇した際には、気持ちの切り替えを兼ねて行ってみても良いでしょう。
私自身は、診察室で患者さんが入れ替わるたびに姿勢は正します。
2分どころか2秒もかからないですが、これが案外有効なので人間は不思議です。
お金も時間もかからない
周囲には自分が優秀で自信があるように見える
自分にはストレスを抑えてくれる
とても便利な魔法のようなものですね。
思考や感情を今日明日で整えるのはなかなかできることではありませんが、姿勢を2分間変えるだけなら、すぐにできそうではありませんか?
自分を整える一つのきっかけになると覚えていただければと思います。
さ、読み終わったらみなさんパワーポーズをはいどうぞ。
茂木千明
コメント