先日、診療の中でとある患者さんからこのような相談を受けました。
「気持ちに余裕がないときに、家族や友人に対してきつい言葉を返してしまうことがあり、その後いつも後悔をします。そうした時でも上手に接する方法や自分への働きかけってないものでしょうか?」
ふむふむ、私も忙しい時や余裕がないときはイライラしがちなのでとても共感ができるお悩みです。
では、実際にどのように対応するのがベターなのでしょう?
今回は心の余裕について少し掘り下げていきましょう。
○そもそも心に余裕がない状況とは?
言葉で説明するより、まずは具体的な場面を想像してみましょう。
では一緒にイマジネーションの世界へ!!
目の前に【余裕がない自分】がいて仕事をしている場面を想像してみてください。
あなたは第三者として【余裕がない自分】を見ている立場とします。
ではよく観察をしてみましょう。
どんな感情を持っていますか?
イライラしていますか?
不安を感じていますか?
余裕がない自分に自己嫌悪を感じているでしょうか?
どんな行動や態度をしていますか?
せかせかしてまとまりがないですか?
いつもより言葉がきつかったり、声量が大きかったりしますか?
それとも無口になりますか?
少し暴力的になってはいませんか?
そのときの状況判断能力は普段と比べてどうですか?
普段と同じく正しい状況判断ができそうですか?
よりbetterな判断を見逃していませんか?
どのような表情や雰囲気ですか?
抱いている感情を表情や雰囲気でもあらわにしていますか?
悟られないように表面上はうまく隠していますか?
さて、想像お疲れ様でした。
人によって様々な状態を想像されたかと思います。
ではここで質問です。
想像の中にいたご自身は【普段のご自分】と一緒でしたか?
○自分のコンディションを客観的に認識しよう
自分と言われればそうだけど、いつもの自分とはちょっと違う…
このような回答であればそれはOKです。
そもそも心に余裕がない状態では自分自身の本来の能力を発揮できません。
だからこそ自分のようなそうじゃないような…
このような感覚になることでしょう。
でもこの感覚が非常に大事なのです。
人間ですから日によってコンディションが異なるのは当然のこと。
今のコンディションと感情をどのように表出しているか、もしくは表出する可能性があるかを自己認識することで、初めてその対応を考えていくことができるのです。
余裕がないときはどこが違っていたのか?
人によってそれぞれ違いがあるので、自分自身の違いを具体的に列挙してみてください。
もし「普段と特に変わりないなぁ」と感じた方!
自己のコントロールが素晴らしくできているからそう感じたのかもしれませんが、悪くいうと自分を強く抑制し過ぎている可能性も考えられます。
余裕が無い時ほど自分を客観的に捉えにくいので、一度身近な方から自分の様子をヒアリングしてみて下さい。
○心に余裕がないときに心がけたいこと
心に余裕がないときは上手に対応ができないこともあるでしょう。
しかし【自分は自分】【他人は他人】。
社会生活を営む上では自分がどんな状況・状態であっても、それを他人に押しつけたり強いたりすることはできません。特に社会人であれば、どんな状況であっても礼節を保った上でコミュニケーションをとり、仕事のパフォーマンスを維持することは必要な能力と言えるでしょう。
そのためには以下2点を心がけてみましょう。
1 自分の状況や感情+希望を伝達する
自分に余裕がないとしても、それを伝えないと他人には伝わりませんし理解をしてもらうこともできません。ただし伝え方にポイントがあります。
例えば
「今忙しくて余裕がないの!」
と伝えた場合、言われた相手はどう感じるでしょう?
「だから?じゃあどうすればいいの?」
そう思いませんか?
では合わせて
「余裕がないからあと1時間待ってもらっていい?」
「一緒に30分だけでいいから手伝ってくれると嬉しいのだけどどうかな?」「今は落ち着くまでそっとしておいてもらえると嬉しい」
こうしたセリフを付け加えるとどうでしょう。
感情だけでなく、どのようにしてくれると自分は嬉しい(助かる)かを一緒に伝える。
自分の希望に対して相手が応えられないこともあるとは思いますが、最低でも自分の状況を相手に理解してもらうきっかけになり、お互い適切な距離感を保てることでしょう。
2 感情のコントロールを色々試す
・食事や睡眠が満たされているかをチェック
当たり前のようですが、身体は心(精神)に強く影響を与えます。
特に多忙・過労により身体の負担が大きいときほど心に余裕はなくなります。
かなり重要なことなので見返してみましょう。
しっかり睡眠時間は確保していますか?
健康的な食事をしていますか?
もし出来ていないのであれば、合間に仮眠を取ったり、質の良いカロリーを摂ってみてください。どうしても時間がとれないのであれば、数分間の瞑想でも良いでしょう。
・焦りや不安や怒りの感情を実況中継する
自分の感情に蓋をして見ない振りをしたり無視をしたりするのは逆効果です。
「あ、今自分は不安を感じているな」
「あ、怒りの感情もあるな」
「少し悲しい気持ちも持っているな」
自己の感情を心の中でもいいのでアナウンサーになりきって実況中継をしましょう。これは自分の感情に飲み込まれないようにする対策にもなり、数分間でも不安や怒りを軽減する効果があります。
・あえて余裕があるように振る舞う
実際に内面ではドキドキな状況であっても、まるで余裕なように振る舞うのも一つの方法です。
行動は感情から生まれることもあれば、行動から感情が生まれることもあります。自分の行動をコントロールできているという自信から不安感やイライラが軽減することも。
・自分に合った気分転換
もちろんその他にも、心の余裕を持つために気分転換するのも一つの手段です。
軽い運動、サウナ、人への親切(ボランティアも可)、ペットを愛でる、お笑い動画を観るなどなど、様々な対策が可能です。
ちなみに上記は、私自身余裕がなくなった時に行う対策ですね。
自分の感情は自分でしかコントロールできませんし、逆説的に言うと必ず身につけることのできるものとも言えます。
ぜひ模索をしてみてください。
○まとめ
以上、心の余裕がないときの人との接し方について触れてみました。
途中でも触れましたが、自分の感情は自分でしかコントロールできません。
【自分の機嫌は自分でとる、相手に不機嫌をぶつけて良いのは赤ちゃんまで】
そして
【相手が不機嫌なのは自分のせいではないので、不安に感じることはないし影響を受けなくて良い】
これが大事なマインドセットです。
少し極論ですが、頭で何を考えるのかは自由ですし、相手が何を思っていても気にしなくても良いのです。
上手に感情をコントロールして、心の余裕を保つようにしていきましょう。
茂木千明
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